日々の出来事や写真、過去の小文、その他諸々を取り上げます。
表題はホームページのタイトル候補だったのですが、咽(喉の上の方)、喉(喉の下、首のあたり)ということで落選しました。しかし因業に音が同じなので、わがままでかたくなな性格の自身にふさわしいと思い表題に復活させました。
バリ点描 その3 水の寺院
前回の旅行では、ヒンズー教寺院3カ所(タマン・アユン、タナ・ロット、ウルン・ダヌ・ブラタン)を訪れましたが、今回は以下二寺を訪れたので印象を記したいと思います。
1 ゴア・ガジャ
人気観光地ウブド近くの山中にあり、創建は11世紀に遡る洞窟寺院ですが・・廃絶し歴史の表舞台から消え・・・1923年オランダ人により発見されたそうです。
さて、駐車場に着き、長い階段を下りると・・谷底の岩壁に洞窟が穿たれていて、周囲は装飾に囲まれています。
暗い洞窟の中は、進入路と左右の分岐路からなるT字型をしていて、壁に何カ所かある浅い窟にヒンズー教の石像が安置され、お供えが置かれていました。
洞窟の手前に石像寺院の部材が列状に置かれた一角があり、ガイドの話では元ここにあった石像寺院が地震で倒壊したため、部材がここに集められているそうです。
女神ウィジャダリの沐浴場も1954年に発見された遺跡で、元は7人の石像女神のへそから水が噴出し、下のプールに溜まるようになっていましたが、中心の女神は地震で壊れて撤去され、現在6人になっています。
へそから流れ出るきれいな水を見ながらどこかに似た場所があったと記憶を探るうちに・・・思い出しました・・清水寺です!・・・舞台からずっと下に降りた谷底にある「音羽の滝」・・屋根上の樋から落ちる滝の水を柄杓で掬い手を濯ぐ光景が目に浮かびました。
2 ティタ・エンプル
10~14世紀に建設されたヒンズー教寺院で、聖なる泉が建立の起源になっています。
ゴア・ガジャでは一般人の沐浴はありませんでしたが、ここでは寺院の前にある大きな沐浴場で沢山の人が沐浴していました。
ほとんどがオーストラリアから観光に来た白人らしく、白人専用プールのような状況です。
受付で御布施を払いサロンのような沐浴衣を借り、沐浴した後、御供えを祭壇に添え、建物内で僧侶に、御祈りをしてもらうようです。
日本で水行というと、頭まで海水に潜る禊、寒中に行われる滝行や寒稽古など厳しい修行の印象がありますが、ここでは、和気あいあい、談笑しながら沐浴していました。
バリ点描 その2 サカミュージアム
旅行の出発前、家内がアヤナリゾート内のサカミュージアムの情報を得て、ぜひ行きたいということなので、オプションツアーのない日に訪問することにしました。
10:00過ぎ、旅行会社がサービスで出しているリゾート巡回バスでホテルを出発、アヤナリゾートはバデゥン半島の切り立った崖を登った台地上にあるので、バスは深い渓谷に刻まれた険しい坂道を登って行きますが、谷底にはゴミがたくさんたまっていて、リゾートの暗部を示しているようでした。
坂を登り切り、平坦地をしばらく進むとアヤナリゾートの入口ゲートがあり、バスは、そこをくぐって敷地内に入ったのですが、森に囲まれた広大な敷地内をいつまで行ってもバスストップのあるホテル前に着きません。
そのうち左手にサカミュージアムが見えてきましたが、バスはそれを横目にどんどん進んで行き、2分くらい走ってようやく台地の端にあるホテルに到着。ここには崖からせり出した有名なロックバーがあります。
ミュージアムは、大分手前だったので、仕方なく「歩いていくか」と決心した時、屋根だけで壁のないトロッコ列車のようなリゾート内巡回バスがやって来ました。
運転手に「サカミュージアムに行くのか?」聞くと「OK」だったので乗車、ミュージアム前で降ろしてもらい、建物を見るとバリの住居を模した近代建築が、森や池に抱かれて周囲に溶け込んでいます。
入口を入ると受付横にヒンズー神像があったので、文化財の展示が中心かと思ったのですが、スロープを登って2Fの展示場に入ると、巨大で奇怪な現代美術の神像が何体も展示されていました。
キャプションを見るとこれらは、新年の祭り「ニュピ」で巡行される悪霊像「オゴオゴ」と記されています。
構造は「ねぶた」と同じ「張りぼて」ですが、顔の表情、肌の艶が実にリアルで、まるで「生き人形」のようです。
別室内に設置されたドームの床に寝転び天井に映し出されるバリの1日映像や、1Fのホールの大型スクリーンで投影されるニュピの記録映画(各国語のアナウンス付き)も大変よくできており、長時間上映なのに退屈しません。
さて、本来の「オゴオゴ」は、行事が終わると燃やされるそうですが「青森ねぶた」も昔は海に流されて火をかけられたそうで「弘前ねぷた」は今でも巡行が終わると燃やされるので「オゴオゴ」と「ねぶた」には共通性を感じました。
観覧後、親切な受付係に
タクシーを呼んでもらい、クタビーチのモール「ビーチウオーク」まで行き、昼食、その後、モール内の食料品店で買ったマンゴーが、安値なのに大変美味だったことを付け加えておきます。
バリ点描 その1 風の香り
先日、往復の機内も含めて6日間(当初は5日間だったんですが、伸びた理由は後述します)バリに観光旅行に行ってきたので、思い出をつらつらと記したいと思います。
さて、小生が初めて訪れた東南アジアの国は、フィリピン・マニラでした。40年前、陶磁器調査のために国立博物館に一週間通いましたが、朝夕の往復路でスリにあったり、若者の蛮勇で治安の悪いエリアに探検に行ったところ、偶然会った日本人に「ここから、すぐ立ち去るよう」にきつく言われ、あわてて逃げ帰ったり・・・。
危険な日中?を過ごし、夕方、安ホテルに帰って、レストランでくつろぐのですが、そこの客は大半が米兵なので、東南アジア気分は味わえず・・・。
その後、遺跡調査やシンポジュウムに参加するため何度もインドネシアに入国しましたが、スタッフとして役割を果たさねばならない責任感から、風土に親しみ、地元文化をゆっくり楽しむ余裕はありませんでした。
現職生活を終えると、観光旅行に行くようになり、バリも2回訪れました。前回、前々回も多分「今回のような気分」を感じたと思うのですが、帰国するとそこそこ忙しいパート生活の中で忘れていたのでしょう。
3度目のバリに着き、空港を出て、重い香料とヤシ油の入り混じった強い香りが、風に運ばれて来ると「ああ、これだ・・これこそが、自身をこの地に引き寄せるのだ。この風に包まれるために何度もここを訪れるんだ」と、たちまち、懐かしさが甦り、陶然として・・・迎えの車に乗ることも忘れてしまうほどでした。(続く)




