2021年5月

 日々の出来事や写真、過去の小文、その他諸々を取り上げます。
 表題はホームページのタイトル候補だったのですが、咽(喉の上の方)、喉(喉の下、首のあたり)ということで落選しました。しかし因業に音が同じなので、わがままでかたくなな性格の自身にふさわしいと思い表題に復活させました。

好きなバス路線(その2) 神戸市バス92系統

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 92系統の東行きは、2系統と同じ「大丸前」から出発し、後者は「布引(新神戸駅前)」から山麓線に入り、前者は「山手幹線」をそのまま東進し灘区の東端「石屋川車庫前」が終点になるのですが、同系統は中程の「布引から王子動物園前」までと東部の「王子動物園前から終点」では車窓が大きく変化する路線なのです。

 昭和46年「山手幹線」中央部の市電軌道が廃線により撤去され、築盛され中央分離帯となり楠が植えられました。

 50年後、20m近い大木に成長した楠並木は枝が大きく広がり「布引・王子動物園前間」では、歩道のポプラ並木と重なって、車道に覆いかぶさるトンネルのようになっています。

 同区間は、高層マンションやスーパーがなく、昭和と平成の建物が入り混じる「中途半端に古びた街並」が緑陰に沈んでいるためか活気がありません。

 灘区水道筋に住んでいた頃、今治からの帰省時、大体9時過ぎに「新神戸」に着くと、すこし南にある「布引バス停」から「石屋川車庫前行」を利用していました。

 当時、乗車すると座席はほぼ埋まっているのですが、乗客の顔には心なしか疲れが見え、車内は「千と千尋の神隠し」に登場する湖上の電車のような静けさに包まれています。

 バスは暗く沈む街並みを進み、バス停ごとに少しずつ客を降ろし、乗客ほとんどいなくなった頃「王子動物園前」に到着・・。

 ところが「同バス停」を境に、並木は続くのですが、歩道が広くなり、部分的には車線も増えるので「楠・ポプラのトンネル」の天井が抜け、圧迫感がなくなります。

 次のバス停は「阪急王子公園駅前」で、乗換えに便利なことと、JRの駅も近くにあることから、道路の両側にはマンションが屏風のように連なり、店舗も一気に増加・・。

 さらに東進し、都賀川を越え「六甲口」バス停あたりまで来ると、最寄りに大学が三つもあるせいか、学生の往来も多く、居酒屋や焼肉屋・カフェ・ケーキ屋さんが点在・・。

 「傾いた家」を過ぎ、彼方に天井川化した石屋川の堤防の上まで続く登坂が見えてくると終点の石屋川車庫前もう間近です。

 さて、前回に続き昔話をいたしましょう。

 現在の92系統の起源は、昭和5年の神戸市バス発足時に「須磨駅前→桜口(現灘区)」を結んだ1系統と昭和25年3月15日から運行が始まった18系統(王子公園→三宮間)の2つの系統に遡ります。

 1系統は昭和20年に「大橋9丁目(長田区)から石屋川」まで主要なバス停のみ停車する「急行運転系統」に変わり、昭和29年には「板宿(須磨区)から石屋川車庫前」に路線が延長され、子供だった小生は、系統名「1」の横に「急」と記されたバスが、ハイスピードで市電を追い越す雄姿をよく見かけました。

 当時「板宿」というと遥か西の見知らぬ街でしたが、昭和43年に「神戸高速鉄道」が開通するまでは、市内の私鉄ターミナルは場所がばらばらで乗り継ぎに不便だったので、市内を縦貫しそれらを結ぶ速達バスは人気があったようです。

 しかし「同鉄道」の開通後「急・1」系統は廃止されると同時に永久欠番になってしまったようで、かつての栄光は記録は歴史の彼方に消えていってしまいました。