日々の出来事や写真、過去の小文、その他諸々を取り上げます。
表題はホームページのタイトル候補だったのですが、咽(喉の上の方)、喉(喉の下、首のあたり)ということで落選しました。しかし因業に音が同じなので、わがままでかたくなな性格の自身にふさわしいと思い表題に復活させました。
好きなバス路線(その1) 神戸市バス2系統
小生もかつては「乗り鉄」で、夜行や寝台列車で九州・東北・北海道等へ移動し、翌朝、到着した駅で適当な各停に乗換え、通勤客や通学生の方言を聞きながら、無駄な時間を過ごすことを何よりの楽しみとしていました。
鉄道程旅情を感じないものの「県をまたぐ長距離」や「近郊路線」のバスに乗ることも好きなので、気に入っている系統の紹介をいたしましょう。
現在、住んでいる中央区から灘区の実家に行く折よく利用する路線が「神戸市バス2系統」の「阪急六甲行(東行き)」で、同系統のバスに始発の「大丸前」から乗車すると、ケーニヒスクローネ前の道を東進、国際会館前交差点で左折しフラワーロードに入り、JR・阪急のガードを抜けて北上、「布引(新神戸駅前)」からは、激しいアップダウンやカーブの多い「山麓線」に入り東に向います。
同路線の最初の見どころは「熊内6丁目(バス停)」南にある昭和モダン建築「神戸市公文書館(旧南蛮美術館)」。
館の正面は左右非対称、玄関の上部は寺院の格天井のような形状で、長提灯のような照明が中心にある個性的な建物ですが、館より強い印象があるのはバス停東にある谷底が見えないほど深い狐川の渓谷で、子供の頃は怖くてバスから覗き込むことが出来ませんでした。
二つ先の「野崎通3丁目」と「青谷」間は路線中随一の急勾配で、軽量でパワーがある現在のバスは余裕で登攀して行きますが、車重が重く、馬力も足りない昭和40年代のバスは、大きなエンジン音をたて排気ガスを勢いよく吐き出すもののスーピドが上がらず、なんとか低速で坂を登り、ピークの「青谷」にたどり着くような有様でした。
「神戸高校前」の交差点からは「阪急王子公園駅」まで続く長い坂道があり、港や大阪湾、対岸の泉州方面まで見渡すことができ、その素晴らしい展望をちらっと眺めるうちに到着する「観音寺バス停」で普段は下車するのですが、その先にも「五毛天神」近くある「祭のだんじりが山麓線を横切る間、バスは気長に通過を待たねばならない交差点」や桜の名所「護国神社」などがあり、車窓は多彩です。
さて、少し昔の話をいたしましょう。
実家に住んでいた頃、布引や加納町に行く際は同系統によく乗っていました。
昭和40年代の初め頃までバスには女性の車掌が乗車していて、バス停を発車すると、次の停留所を乗客に告げ、乗客の降車希望を確認し「停車」か「通過」を運転手に知らせます。
ところが車掌が次の停留所を告げても「はい降ります」と返事をしたり、手を挙げて合図する乗客はめったにおらず、ほとんどが車掌の方に視線を向けるか小さく頷いて降車の意思を示すだけなのですが、車掌はしっかり感知し、運転手に知らせるのです。
「車掌が乗客の僅かな動作を見逃すことなく感知する」能力は、子供にとっては驚くべきことで、乗車するたびに感心していましたが、40年代後半頃から当該系統もワンマン運転に移行してしまい、車掌の能力を見る機会がなくなってしまったのは残念なことでした。