査読論文の光と影(その2 論文の書き手)

 私は20代後半から30代にかけて、研究や仕事に役立つ「重要な考古学レポート」をたくさん集めたことがあります。記載冊子は「紀要」「年報」「特別展の図録」「発掘調査報告書」「文化財パンフレット」「文化財ニュース」「現地説明会のパンフ」等多種多様ですが、意外なことに本格的な「研究誌」に記載されている「論文」は多くはありませんでした。

 考古学論文の書き手は、①土木工事に伴う緊急調査により、億単位の予算で大規模調査をしている「市町村教育委員会や埋蔵文化財センターの埋蔵文化財調査員」②少ない予算で細々と学術発掘をしている「大学等の研究者」とに分けられます。

 しかし、「埋蔵文化財調査員」は「調査データ」はたくさん持っているのですが、発掘調査中に「現地説明会」を実施し、パンフレットを作製。発掘調査が終わると「発掘速報展」の原稿を書き、「発掘調査概要報告」や「発掘調査報告書」等も発掘調査後比較的短い期間で刊行されるので中々忙しく、ゆっくり論文に取り組んでいる時間は多くありません。

 では、「研究するのが仕事である」大学等の教授や准教授は、どんどん論文を発表するのでしょうか?実はそうでもありません。昭和50年代の大学と違い現在の大学は学生の教育に重点が置かれていて、教員一人当たりの授業時間も長く、各種会議も多く、中々研究時間が取れない上に調査予算も少ないので、まとまった論文が書けず、学位(博士号)を持っていない大学教授も結構多いのです。

 では一番多い論文の書き手は、やはり「大学院生(修士・博士課程)」でしょう。その中には定年後に入学した「シルバー学生」も多く含まれています。(その3)に続く