「謹慎」の話

 小生は子供の頃から内向的かつ依怙地な性格で、人付き合いが大の苦手でした。その性格は成長してからも変わることなく、現役時代も上司や同僚、部下との関係は齟齬ばかりでうまくいかず、しょっちゅうトラブルを起こして処分を受けましたが「降格」「減給」「左遷」の三件については回数が多く、慣れてしまったこともあり「まあ、しゃあない」と成り行きに任せておりました。

 定年退職間近になって、初めて5か月間の「謹慎処分」を受けました。

 「処分言い渡し」の翌日、今までいた事務所から「デスクだけが置かれた倉庫二階の洋室」に移され、本部の事務員が、週一回出勤簿チェックに来る以外、社員は誰も来ないさみしい環境で「プロジェクトの残務処理」を一人細々と行うのが、与えられた仕事です。

 ところが、実際「謹慎生活」に入ってみると煩わしい「部下の管理」や「月例報告」、役所からくる「無駄な質問票の処理」等から解放された上、倉庫一階を休憩場所に利用していた作業所のパートの方が、おやつ時間に「コーヒー」をサービスしてくれるという好待遇。精神状態は処分前より格段に良くなりました。

 そんなわけで「謹慎期間」も順調に?消化し、あっという間に年度末になりましたが、「謹慎」のおかげで「送別会」に参加せずに済み、後始末にやってきた「週一事務員」に挨拶しただけで退職出来たのは幸いでした。

 小生の経験した「送別会」は「天下り・再任用に係る退職者の今後の地位」「実力者転退職後の派閥の消長」「転退職上司に対する部下の積年の恨み」等の「危険因子」を含んで開催されることから大荒れになることが多く、とばっちりで怪我をしたこともあり、参加が憂鬱だったからです。

 退職当日、「お別れ」に来てくれた気骨ある同僚が退職記念にくれた「鉢植え」の枝は2年たって少し伸びました。秋には紅葉するので、眼福にあずかることが出来ます。