早春伊豆紀行(その2)

 伊豆高原駅に着きましたが、ホテルのチェックインまでは、しばらく時間があるので、駅近くに小さな美術館に入りました。展示品にはあまり期待していなかったのですが、2階の展示ケースに沢山の「鼻煙香」(びえんこう-中国の嗅ぎ煙草入れ―)が並んでいたのには驚きました。

 「鼻煙香」のコレクションは台湾の故宮博物院が有名で、大阪の東洋陶磁美術館にも常設展示室がありますが、ここのコレクションも中々レベルが高く、閉館時間近くまで粘ってじっくり見物し、それから、タクシーで大平台のプチホテル(昔は「ペンション」と言っていたような気がするのですが?)に移動。露天風呂に入り、料理自慢のオーナーが造る夕食を堪能し、早々と就寝しました。

 翌朝は「焼きたてパンとデザート付の豪華な朝食」ですっかり満腹になり、タクシー・電車を乗り継いで10時過ぎに伊豆急河津駅に到着。時雨の空、長く続く寒さのせいか河津川沿いの桜はまだ2~3分咲き。しかし、少し離れたところにある「原木」は見頃の8分咲きです。

 帰宅後、ネットで調べると「河津桜の原木が発見されたのは1955年、70年代になると増殖が盛んに行われ、河津川沿いの桜並木を整備、1981年に初めてさくら祭が実施された」とあります。今年は2015年ですから河津桜の歴史は60年しかありません。

 私が子供の頃、桜シーズンの先駆けは沖縄や奄美の「緋寒桜」でした。それは今でも変わらないのですが、近年それに加えて「本州の桜の先駆け」として「河津桜」の開花が報道されるのが「通例」となりました。

 何百年もの伝統があっても広く知られない「風物」もある中で、たった60年で早春の「歳時記」を育て上げた河津町の人々の「着目点の良さ」「宣伝のうまさ」「町民あげての努力」には、感心するばかりです。

 桜見物を終えて、電車で稲取に移動。漁師料理の店で「金目鯛の煮付定食」に舌鼓を打ち、近くの公共施設で「雛のつるし飾り」を見ました。「雛」といっても「宝尽くし」の造形が一本の糸で沢山つるされたもので、天井からいっぱいつるされた様子は中々壮観です。この雛飾りは江戸後期以来の伝統をもつものだそうです。

 これにて見物は終了。熱海に戻って新幹線で関西に帰ります。事前にきっちりとした予定を立てない、気まぐれ旅行でしたが、行く先々で新たな発見や感動があり、心が豊かになる伊豆紀行でした。(「番外編」に続く)

河津桜原木

河津桜原木

雛のつるし飾り

雛のつるし飾り