行幸啓の話 (その2)

・準 備2

 天皇・皇后両陛下や県知事の代役、宮内庁、警察、役所の関係者が御料車、警備車、県の公用車を伴って参加するリハーサルも行われました。

 当日の開始時間、館内から外を眺めていると長い車列が町道に現れ、構内に入り「車寄せ」に到着、両陛下と随行員が下車し、安土町長、安土町議会議長の御出迎えを受けますが、随行員の中に皇后陛下に付き従う「白いスーツを着た小柄な女性SP」がいるのが目に留まりました。

 県庁から応援に来たある職員は「あのSPのハンドバックには拳銃が入っていて、テロリストが襲ってきたらぱっと取出して射殺するんや」言っていましたが、後で調べると行幸啓の警備をするのは「皇宮警察」の「皇宮護衛官」で警視庁や道府県警所属のSPではありません。ハンドバック内に拳銃が入っていたかどうかも不明です。

 両陛下が御休息される部屋は殺風景なので「壁に絵をかけよう」ということで課長の知合いの「県展入選実績のある素人画家」のところに自信作を借りに行き、行幸啓前日には県内の諸施設から借りてきたソファやテーブル、「松の盆栽」と共にセットし、カーテンも厚手の物に取替え、夕方遅くになり漸く受入準備が整いました。

 当時、小生は独身の気楽な身の上だったので前泊に志願し、同じく前泊する館長や県庁からの応援職員達と夕食の弁当を食べていると、行幸啓全体の警備責任者が現れ「回り合わせでこんな役つけられてしもたわしほど運の悪い男はありまへん。もし明日、車列の上をちっこい石が一個ポーンと飛びますやろ。被害がのうても私の首もポーンと飛びますんや。明後日、車列が逢坂山(滋賀県と京都府の境)を越えるまで生きた心地がしませんわ」と愚痴を言うので、館長は「もう少しの辛抱や」と慰めています。

 機動隊は観音寺山中腹にテントを張って野営、サーチライトをつけて徹夜の警備を行い、館長は「御先導・展示解説」の練習に余念がないようですが、小生は11時頃にはソファをベッド代わりに就寝しました。