小説「幻の町 第1部 過去の街」 

 2020年9月26日、レンタカーを借りて、岩岡町の歌枕「野中の清水」を訪ねた帰り道に丸山大橋を渡った折「谷底から山頂近くまで斜面に藤壺のように家がびっしりとへばりつく異様な街」が目に飛び込んできたため、びっくりして脱輪しそうになりました。

 このあまりに強烈な光景が忘れられず、その年の11月「新開地駅」から神鉄に乗り「丸山駅」で降り、地面を這うように街を探訪しながら廃校になった雲雀ヶ丘小学校まで登っていき、そこからは市バス路線を下って、丸山観音(妙昌寺)下の「丸山バス停」からバスに乗車し、JR神戸駅に帰着したのが、最初の踏査で・・。

 2回目はJR神戸駅から「大日ヶ丘住宅前行」の市バスに乗車、終点で降り、ぐるっと回って、降りて来て、丸山観音を参拝し、市バス路線に沿って脇道チェックをしながら長田神社まで歩いて下りました。

 3回目は「鵯越駅」で神鉄を降り、鵯越墓地を目指して分かれ道を確認しながら坂道を登り頂上に着くと「導水管トンネル」を発見!こわごわ潜って向こう側に出て、坂道を谷底まで降りて、市バス路線を「堀切バス停」まで進み、そこから台地に上り、南端まで行って、崖下を覗くと・・。

 急斜面をソーラーパネルが覆いつくす異様な光景を見てしまい、興奮のあまり動悸がしたので、天を仰ぎ深呼吸をして落ち着くまで待って、もう一度見下ろし目に焼き付けてから、バス路線に戻って「宮川町9丁目バス停」まで下り、市バスに乗車して「夢野2丁目」にでました。

 4回目は「JR新長田駅」から「ひよどり台行」の市バスに乗り「花山町バス停」で降り、丸山地区西側斜面の階段や隘路を丹念に歩き回ってから、坂を下り「宮川町9丁目バス停」から市バスに乗り「JR神戸駅」で降車。

以上、ほぼ1カ月に1回「丸山」を訪ねましたが、何度行っても見飽きない魅力がそこにあります。

 その後、YouTuberの「秋蛇星」さん「とんちゃん」さん「はらぺこ地理部門」さん達が公開している「丸山」の映像を見て、昭和初期の遊園地開設が同地区開発の端緒となり、高級別荘地が分譲され資産家が集う街となったもの太平洋戦争のため廃れてゆき、戦後、不動産会社による不合理な土地整理とそれに対する住民の反対運動がおき、昭和30年代の高度経済成長期には斜面や崖下など居住不適地まで無理に造成がなされた結果、昭和50年代の終わりには開発の限界により人口が減少し、現在は住民の高齢化が進んで、廃墟が増加し、街は衰退していること、神戸電鉄の軌道建設で働いた朝鮮人が住み着いた複数の集落が街の東側の山腹あったが、既に廃され、そこに至るトンネルもコンクリートで蓋がされてしまったことに加えて「導水管トンネル」の紹介もされていることも知りました。

 「丸山」は、広域的、重層的な近・現代史が刻まれた史跡のような街です。

 そんな丸山体験をしてしばらくした頃、小説制作願望が沸き上がって来て「丸山が舞台の小説」を書き始めましたが、当初の構想では、

 「丸山」がモデルである不思議なエリアに迷い込む夢を見た主人公が、滋賀の病院の入退院を経て、再び同エリアを訪れ(その2)と再会し、夢の秘密を教示してもらい、終わる」

という単純なものだったのですが、書き進める内に構想が膨らんできて、だらだらと書き続け、いつ終わるかが分からなくなってきました。

 小説執筆のせいでブログの投稿もめっきり減ってしまったこともあり、物語はまだ中途ですが、とりあえず一旦休止し、出来た分を「第1部」としてアップし、結論に至る「第2部」は数か月後には「劇終」表示をしてアップできるようにしたいと思いまので、どうぞ御承知おきください。

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 失礼いたします。

 

幻の町