インドネシアの思い出 -ジェグボンド-

 平成8年、「インドネシア史跡巡りの旅」の折に訪れたスラウェシ島南部に存在したビナム王国のイスラム墓地遺跡「Jegbond-ジェグボンド-」を紹介します。

 イスラム教は厳格な教義を持ち、墓の構造にも決まりがあります。同遺跡の墓も基本構造はアラブ伝来の「イスラム様式」をとっているのですが、全体を覆う「過剰な装飾」や墓の上部両端に刻まれた「女性像」「一対のコモドドラゴン」の文様などは、一般的なイスラム墓には見られません。

 インドネシア考古学当局により初めて調査された時には、墓の上部に被葬者と思われる「椅子に座った人物の石像」が置かれていました。(現在は博物館にあります)

 スラウェシ島に伝来したイスラム教が、地元の「自然信仰」と習合した結果、墓の形状は「イスラム様式」でありながら、装飾はイスラム教の教義に反する不思議な墓が出現したと思われます。

 この墓域に一歩踏み込んだ時、墓標群から発せられる言いようのない「不気味なパワー」を感じ、思わず後ずさりしました。同時に、幻覚を見ているような不思議な感覚がしばらく続いたことが、記憶に残っています。

ジェグボンド遺跡

ジェグボンド遺跡

墓石の過剰な装飾

墓石の過剰な装飾

女性の浮き彫り

女性の浮き彫り

コモドドラゴンの浮き彫り

コモドドラゴンの浮き彫り

 以前は上に石像が載っていた

以前は上に石像が載っていた