日々の出来事や写真、過去の小文、その他諸々を取り上げます。
表題はホームページのタイトル候補だったのですが、咽(喉の上の方)、喉(喉の下、首のあたり)ということで落選しました。しかし因業に音が同じなので、わがままでかたくなな性格の自身にふさわしいと思い表題に復活させました。
巨像の沈降
・深夜の渋滞
大学を卒業した頃ですからもう40年以上前の話です。
東京からの帰り、東京駅バスターミナルから大阪行きドリーム号に乗車。
11:00過ぎ、出発したバスは、八重洲入口から首都高に入り、渋谷を経由し、用賀にある東京インターから、東名高速を西行するのですが、首都高に入りしばらくするとバスの速度が遅くなりやがて停まってしまいました。
それから、少し進んでまた停まるを繰り返し、渋谷の手前でようやく順調に走行し始めました。なんとこんな深夜に渋滞していたのです。
「異常だ。原因は首都圏の人口が多すぎるからだ」
と、何とも不安な思いがしました。
・南武線の混雑
平成の初め頃、武蔵溝ノ口駅から昼下がりの南武線に乗ると、どの車両もいっぱいでまるでラッシュ時の様な込みようです。
関西では昼下がりの国鉄は大抵ガラガラなので、衝撃を受け、
「これはだめだ、首都圏は人口が多すぎる」
と、やはり不安な気持ちがこみあげてきました。
東京で就職した友人から
「多摩や相模の山奥から私鉄に乗って都心を目指す電車は、始発駅で満員になり都心近くの駅では積み残しが出る」
という実態を聞いたことも。
昭和50年代に上京した折、山手線や京浜東北線の電車が10両もの長尺で走っているのを見て驚愕したものですが、現在は16両に増えています。
・弾丸富士登山
やはり平成の初め頃、友人4人で車に乗り、神戸を出発、交代で運転し、夕方「富士山五合目登山口」の「第3パーキング」に到着、夕方から徹夜で登山し御来光を見て下山、昼前くたくたになって「パーキング」に戻りました。
ところが車の所有者がまだ戻って来ません。おそらく土産屋で品定めをしていて遅れたのでしょう。
仕方なく車の外で待っていると子供連れの見知らぬ男が現れ標準語で、
「車を出されたらそこに入れさせてくれませんか?」
と尋ねます。
「いいけど、車はどこにあるの」
と、聞くと
「300mほど下ったところにある第10パーキングにあるので、すぐに取りに行きます」
と、答えます。遠目に見ると道路沿いに駐車場が何カ所もあり、かなり下のパーキングまで満車状態。
「ドライバーが戻ったらすぐ出しますけど」
男は、頷いて、
「子供に番をさせます」
と言い、
「取りに行っている間に車が出たら、場所取りをしていろ」
と命じて、車を取りに行きました。
首都圏の住民はレジャー先でも混雑に巻き込まれていることに同情ひとしおです。
・巨像の沈降
コロナ禍のニュースの度にスカイツリーを中心とした都心の俯瞰映像が放映されます。
まるでカイガラムシに占領された葉のように、白々とした緑の少ない無機質な町ですが、全国津々浦々から人間を吸い寄せ、人口を増やすことで繁栄を享受してきました。
しかし、小生が度々感じていた「都市の限界を超えた人口」が弊害及ぼす時がコロナ禍とともに到来。
首都圏では、検査体制が整わず、発熱外来もパンクし、救急車のやりくりがつかず、重症病床使用率も上昇、コロナの初期には、東京に行くのを敬遠したり、東京から来た人を忌避したりする状況まで生まれました。
草原を縦横無尽に歩き回り、飽食し、巨大化した像が、コロナの底なし沼にはまり、有利であった重量が不利に転じ、どんどん沈んでいく恐怖を初めて味わっている。
そんなように思えるのですが、いかがでしょう?