2016年12月

 日々の出来事や写真、過去の小文、その他諸々を取り上げます。
 表題はホームページのタイトル候補だったのですが、咽(喉の上の方)、喉(喉の下、首のあたり)ということで落選しました。しかし因業に音が同じなので、わがままでかたくなな性格の自身にふさわしいと思い表題に復活させました。

「バンビ原作」の衝撃

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 小生が生まれて初めて鑑賞したアニメ映画はディズニー映画「バンビ」で、今でも筋書きはよく覚えています。ところが、最近、神戸新聞に「バンビ原作」の書評が載りました。映画の脚本はディズニーオリジナルと思っていたので意外に思い、手に入れて読むと、著者はハンガリー生まれで、オーストリアで活躍した作家ザルテン。物語は24章からなり、舞台は映画と違うオーストリアの森で、話の展開も全く違っています。

 「原作」の前半では「誕生」「成長」「子離れ」「発情」「縄張り争い」など「鹿の成長」や「森の自然や動物」について綴られていますが、記述が丁寧すぎて読むのが苦痛でした。

 しかし、後半は森の動物を恐怖に陥れる狩りの場面が徐々に増えてゆき、21章の「バンビの被弾による負傷」から最終章の「古老との別れ」までは激流のような展開になり「予想外の結末」が訪れます。

 その結果バンビは「動物の生殺与奪権を持ち、全能だと思われていた人間」と「一方的な被害者である動物」より「さらに上の方(かた)」がいることを知るのです。

 「さらに上の方」は、舞台が欧州であることから「キリスト教の神」と考えるのが一般的ですが、時として人間にも牙をむく「自然そのもの」かもしれません。

 命の危機にある時は全力で助けますが、普段はバンビを「目の前の現実」に向き合わせ「自主的な判断と行動」を促す「鹿の長老」は「理想的な教師」、愛玩動物として飼育され人間を信頼しきっていたのにあっけなく殺されてしまうバンビの友達「ゴーボ」は、「ブラック企業」に「社畜化」された挙句、リストラされる「みじめな会社員」の寓喩のようにも思われます。

 翻訳版は1952年に岩波少年文庫として出版されていたようですが、恥ずかしながら全く知りませんでした。子供向け読物ながら、狩りの場面では動物の「被弾」から「絶命」までの経過が的確に記されていて、「ダックスフントらしい猟犬が狐を噛み殺すところ」は大変写実的で迫力があり、当該犬のイメージが随分変わりました。

 「原作のバンビ」のモデルとなった「ノロジカ」はニホンジカの半分程度の大きさしかないので、厳しい自然の中を生き抜いてゆくことは本当に大変だったと思います。

 「原作」は大変すばらしい動物小説なので、皆様にも御一読をお勧めします。