ギザミ釣り(その3)

 夏になり海水温が上がると、ギザミの活性も上昇、クイも立ってきて、時折50尾を超える大釣りもするようになりました。

 竿は細身の寒バエ用なので、15㎝級でも中々水面まで上がってきませんし、25㎝以上の「磯ギザミ」がかかると満月のようにしなり、ギュンギュン糸鳴りがしてすごい迫力です。

 こんなに面白い釣りなのにギザミを専門に狙う釣師は防波堤では小生だけ。大釣りしたポイントでも、翌週には魚が集まって来ていて、竿を出すと大漁ということも多々ありました。

 とはいっても、やはり日によっては、魚信が遠く14~5尾で納竿することもあります。その日もクイが渋くギザミが中々針に乗らず、いつもはきれいになめとってゆく餌も少しかじって半分以上残していくような有様でした。

 気分を変えようと早めにお昼のパンを食べて、新しい餌をつけて仕掛けを投じました。ゆらゆら沈んでゆく目印を見ていると手のひらにほんのわずかな違和感があったので、思い切ってカラ合わせしてみるとがっちりと魚が乗った手ごたえがあり、釣り上げると見事に「上口浅め」に針がかりしています。

 この時は全身の力が抜けてしまうくらいの脱力感と落涙しそうなほどの感動を同時に覚え、「これこそ脈釣りの醍醐味だ」と叫びたくなりました。

 小学生から釣りを始め、いろいろな釣りにチャレンジしましたが、ギザミ釣りを超えるほどの釣趣がある釣りはありません。この釣りを体験しただけでも今治に来た価値は十分あったと思います。(終わり)