早春伊豆紀行(その1)

 「尾形光琳300年忌特別展で『紅梅白梅図屏風』と『燕子花屏風』のが一緒に出るからMOA美術館に行かない?」

と、家内が言うので、同館のホームページで展示案内を見ると、両屏風以外にも「琴高仙人図」「寒山拾得図」「佐野渡図」等、光琳作の名画が多数展示され、「光琳を現代に生かす」というコーナーには、菱田春草の「落葉」福田平八郎の「漣」村上 隆の「ルイ・ヴィトンのお花畑」会田 誠の「美しい旗(戦争画RETURNS)」「紐育空爆之図」「群娘図97」等々「琳派」に影響を受けた「近・現代作家の作品」も同時に出品されるということに心が動きました。

 近・現代作家の中でも、特に会田氏の作品には、非常に興味をひかれていて、「日韓の女子高生」がそれぞれの国旗を持って向かい合う「美しい旗(戦争画RETURNS)」は「日韓首脳会談が行われる会場の壁にぜひかけてほしい作品」だと思っているくらいなので「本物が見られるのなら、出かけるか」と決心し、春節3日目の土曜日に同館を訪ねることにしました。

 当日は薄曇りで、早春にしては温かい日でした。熱海駅からバスに乗り美術館に到着すると、切符売場には大勢の人が並んでいて、入場制限が行われています。

 「両屏風」は入って最初の展示室の左右の壁に対峙するように展示されていましたが、列に並んで少し待つと近くで鑑賞することができました。「紅梅白梅図」は一度見たことがあるのですが、やはり魅力があります。初見の「燕子花屏風」も堂々たる風格に圧倒されました。また「琴高仙人図」は高校の教科書に掲載されていたので旧友にあったような気がしました。

 「落葉」「漣」は感服という以外言葉がありません。会田氏の3作は予想以上に入念に書き込まれていて、迫力がありました。

 質量ともに充実した展示に満足し、美術館を出て、眼下に広がる春の海をしばらく眺め、バスで駅に戻り、伊豆急行の普通電車に乗車し、宿泊予定の伊豆高原にむかいました。(続く)