FC今治のこと

 三年前のことです。職場で釣り大会が行われることになり、1週間前に会場の桜井海岸に下見に行きました。私の日常生活は大雑把で、行き当たりばったりですが、釣りに関してはいつも用意周到で慎重です。新しい釣り場に釣行する場合は、必ず下見に行き、地形や海岸の様子を観察してから、対象魚を絞り、針の種類や大きさ、仕掛けや餌を決めるようにしています。

 当日、最寄りの「桜井ふれあい海浜広場」の駐車場に車を止め、海岸に向かって歩いていると、途中にあるサッカー場で大学生チームが試合をしていました。20人ぐらいのサポーターもいて、その中で太鼓を叩いて応援している男をよく見ると会社の同僚です。早速、寄道して試合のことを聞くと応援しているのは大学チームではなくここがホームグラウンドの「FC今治」で対戦相手は徳島のチームだと言います。

 「FC今治」は「四国サッカーリーグ」に所属するアマチュアチームです。国内のサッカーリーグの格付けはJリーグ(J1→J2→J3)→JFL→四国サッカーリーグ→愛媛県リーグ1部・2部の順で、一つ下「愛媛県リーグ1部」には「松山大学」や「愛媛大学」などの学生チームも所属しているので、大人ばかりのチームとしては一番下のクラスです。このホームグラウンドにも観客席はなく、スコア―ボードは手書きの黒板です。

 そのうちに、勤め先が夏休みに実施した「地域イベント」に「FC今治」の選手数人がボランティアで参加し、子供達にリフティングを教えてくれたこと、その時の選手の印象も「地味な大学生風」だったことを思い出しました。

 ところが、この四国の片隅でひっそりと活動していたチームに奇跡が起こりました。昨年11月「元ナショナルチーム監督の岡田武史氏がFC今治のオーナー兼社長に就任」というニュースが流れ、その中で岡田元監督は、「10年後にはJ1で優勝争いできるようなチームをつくりたい」という壮大な目標を語っているのです。

 「うそやろ」と思っていたら、年が変わり市長も参加して歓迎会が行われたところを見ると、夢ではなさそうで、「FC今治がいつあの桜井のグラウンドを卒業できるのか?」という将来の楽しみもできました。

 3月からはプロを目指す女子中学生を英才教育する「JFAアカデミー今治」も市内に開校します。今治は突然サッカーで注目される町になりましたが、考えてみれば、冬暖かく、雪も降らず、年間を通じて晴天が多いわりには、夏の水不足の心配がない当地は、サッカー向きの土地かもしれません

 ちなみに、釣り大会では、下見で目をつけておいたポイントで釣り上げた28㎝の青ギザミをが大物賞となり、景品としてビール1ダースを獲得しました。