五十年以上前、中学生の小生は実家近くの絵画教室で日本画を習っていました。
生徒の大半は小中学生でしたが、数少ない大人の生徒で教室に来ると先生や生徒に間断なくしゃべりかける「うっとおしい」おじさんがいて、二言目には、
「神戸は景色もよいし、食べ物もおいしい住みやすいところで、ずっと神戸にいたい。大阪や京都に行きたいとは思いまへん」
と言います。
「世間の狭い、しょうもないおっさんや、自分は大阪や東京どころか日本全国を旅して、神戸以上の街を見つけてやる」
と、ばかにしていました。
その後、27歳で故郷を離れ、滋賀に25年、今治に7年住み、愛知や広島、鹿児島などで長期の現場に入ることもあり、59歳にしてようやく帰郷しても、すぐに郷土愛が芽生えるということはなかったのですが、2年、3年と過ごすうちに徐々に「神戸沼」に沈み、最近では前述のおじさんのように、ずっと「沼」に沈んでいたい気持ちが、強くなってきましたので、その理由を述べてみましょう。
- 景色が良い
コンクリートシティ大阪から電車に乗るか、あるいは車で阪神高速を西行し西宮に入ると六甲山脈が南に貼りだしてきます、山腹に街が貼り付いているよう東灘区を抜け、灘区に至ると山裾が後退し、市街地が程よい広さに・・・長田区までその間隔が続き、須磨区になると山脈が海まで落ち込み、まるで南仏やイタリアのリゾートの光景になり・・・ここまで続く山の緑と青い海は、目に優しく、疲れを癒してくれます。
- 気候が良い
京都は盆地のため、大気の動きは悪く、夏は酷暑、冬は酷寒の住環境最悪の街ですし、コンクリ大阪も夏はヒートアイランド現象で一晩中エアコンが必要です。
北に六甲山地、大阪湾がある神戸の中心市街は、昼間は海風、夜は陸風が吹くので、空
気が淀むことがなく、常に新鮮で、他都市より涼しく感じます。
- 適当にさびれている
上記のように住環境は、よいのですが、近年は子育て政策が充実している明石市に人口が流出したりして、北区や西区の団地の居住者が減り、六甲山脈の南側でも過疎化による増えた廃墟を廃墟系YouTuberが紹介しています。
久本市長は三宮付近の再開発をテコ入れにして再浮上を図っていますが、インバウンドでごった返す大阪や京都からやや少なめの人影の行きかう落ち着いた町並みに戻って来るとのどかさに肩の力も抜け・・ここがいい、ずっと住んでいたいと・・・(嗚呼)・・青雲の志はすっかり忘却し、沼に沈んでいくのか?果たしてこれは残念なのか?