(原文)
千 山 鳥 飛 絶
万 径 人 蹤 滅
孤 舟 蓑 笠 翁
独 釣 寒 江 雪
(訳)
山間の雪空に飛ぶ鳥もなく、小径の足跡も雪に覆われた冬の日、蓑傘の老人が一人、小舟から竿を出している。
高級官僚でありながら政争に敗れ、度々地方に左遷され、若くして任地で亡くなった唐代の詩人・文学者である柳宗元の五言絶句です。
ここ10年くらい、釣りシーズンは5月から11月までと決めている小生も40代までは冬場の釣行を度々行い、何度か雪にあったので「江雪」には大いに共感しておりましたが、実際のところは大した釣果もなく「しもやけ」を悪化させて帰ってくるのが関の山でした。
ところで、この詩と共通する趣を持つのはなんと言っても「ヘラ鮒釣」でしょう。
「ヘラ釣師達」は、水辺の釣座から伸びる竿掛けに竿を置き、笠の下から、細長いウキを凝視しています。
餌の付け替えにため意外に短い間隔で竿を上げますが、動作がゆっくりしているせいか、せわしなさがありません。
知合いの愛好者の話によると「釣具会社」や「釣餌会社」が主催する「ヘラ鮒釣り大会」が年何回か実施されるのですが、その中に必ず真冬に行われる大会があり、雪が傘に積もるほどの年もあったそうです。
もともと冬場は食いが渋く、魚信も小さい上、雪の日はウキが見えにくく、風があると手はかじかみ、一日頑張り骨の髄まで冷えきったあげく「ボウズ」という日も多いそうで、ある年の大会では一人が1尾釣り優勝、他は「ボウズ」という悲惨な結果だったことも。
ヘラブナ釣りは日本古来のゲームフッシングで、釣った魚はすべて放生して手ぶらで帰るのが規則です。
「とらぬ狸」の調理を考えながら竿を出す小生には一生かかってもたどり着かない恬淡で優雅な釣といえるでしょう。